さて、このサイトの名前の由来のイングマール・ベルイマンの 映画について少し。実はこの名前は、3年前に自作の宣伝のために 開設したホームページのタイトルをそのまま受け継いでいるのだ。
ベルイマンの映画を最初に見たのは、高校生の時だった。 キネマ旬報に載っていた「世界映画史に残る巨匠の一人」という 宣伝文句に釣られて、どの程度のものか見てやれとばかりに 半ば冷やかしのような気持ちで「ファニーとアレクサンデル」を 見てみたら、ものの見事に一発で魅了されてしまったのだった。
話とか主人公がどうとか言うよりも、とにかく描き方が終始一貫して スタイリッシュなことが気に入った。論理的と言ってもいいぐらいに 簡潔にして明瞭。余計なことは描かない。それでいて観客が見たがって いるものを少し先んじてみせるような微妙なサービス精神。結局僕は、 「ファニーとアレクサンデル」を今は無き大阪の三越劇場で6回は 見たと思う。日本ではテレビ版全5時間半を1日1回上映という、 今では考えられない上映形式だったのだが、途中の休憩時間には館内で 売られている高いサンドイッチを買い込んで、その後も眠り込むような ことも一切無くずっと画面に魅入っていたのだった。
そしてレーザーディスクが出たら即座に買い込み、それ以外の作品も 同じようにチェック始めた。もちろん当時も今もベルイマンが 描こうとしていたことなんてわかるわけはなかったわけだけど、 ただそのスタイルの中に、何か自分が生きる上での強烈なヒントが あるような気がして、一時期はしがみつくようにして見ていたのだった。 最近になってそれがなんとなくわかってきたような気がするのだけど。
「蛇の卵」はベルイマンの映画の日本未公開作品のDVDボックス セットに収録されている作品なのだが、こう言うのもなんだけど ベルイマン映画の中ではやはり駄作の部類にはいると思う。 そもそも主演が「燃えよカンフー」や最近は「キル・ビル」に出た デヴィッド・キャラダインという段階で変すぎる。こういった目眩を起こしそうな キャスティングは、プロデューサーのディノ・デ・ラウレンティスの 真骨頂といった感じなのだが、できあがった映画の方もやはり かなり怪しい。表面的には娯楽であると同時に、それでも根幹は ベルイマン映画でもあるというこの大作映画の仕上がりには、 やはり僕は目眩を禁じ得なかった。
さて、それでは僕がどうしてこの作品の名前を、ホームページやブログの 名前に採用しているのか?なのだが、それはこの作品のラスト近くに語られる 「ある台詞」がいたく気に入ったからだ。それは同時にこの作品になぜ 「蛇の卵」とついているのか?の理由にもなっていて、僕はそれがちょうど 自分の人生をそのまま要約しているように感じたからだ。
さて、ここでその台詞を引用しても良いのだけど、それだと未見の人の 興を削ぐと思うので、止めておくことにする。予想通りDVDはもう絶版 のようなので、興味のある人はどうかオークションなどで探してみて 下さい(苦笑)