ジャック・ペランがプロデュースしたドキュメンタリー映画「オーシャンズ」を見て、がっかりしたというのが本当のところだ。
僕はもともとは同じジャック・ペランのプロデュースした、鳥の生態を追ったドキュメンタリー「Le Peuple Migrateur(日本名「WATARIDORI」)」の、従来ではあり得ないような渡り鳥の近接撮影と、説明を一切排除した寡黙な演出に文字通り熱狂したクチなので、どうしても期待が大きかったのだ。
しかし「オーシャンズ」ではそういった撮影技法上で感心させられるようなところは全くなく(もちろん深海での撮影なので、それ相応の苦労はあっただろうと思われるが)、その上、途中にペラン自身が出演して海の動物たちがどんどんと地球上から消えゆく現状を(それも小さい子供を相手にして!)警告するシーケンスに至っては、相当に鼻白む思いがした物だった。そしてこれに例の「フカヒレ狩猟の映像は再現映像です」などと言った解説が最後に追い打ちをかける。
もちろん「WATARIDORI」の時でも、ある種の演出がなかったと言えばおそらく嘘になるだろう。たとえば工場から出たオイルに足を取られて出られなくなった鳥のシーンなどは、やや作り物めいている。しかし「WATARIDORI」は一切これらについて説明をしなかった。理由は簡単で、同様のことはあちこちで起きているわけで、その必要がなかったからだろう。だからたとえ人の手が直接関わっているできごとであったとしても「オーシャンズ」において「これは再現映像です」などとわざわざ断る必要はあったのだろうか?と思ってしまう。別にヤラセを肯定するつもりはないが、ある程度メッセージ性の強い表現において、蛇足とか野暮とか言うものはやはり考慮に入れておいた方がいい物ではないかと思ってしまう。
もっともそういった点を差し置いても、「オーシャンズ」の海中での撮影映像は、「WATARIDORI」での近接映像のシンプルさとそれがもたらす力強いメッセージ性の微塵も感じられなかった点が、何よりも残念でならない。このところ「ディープ・ブルー」や「アース」といった、どこかで見たような映像をつなぎ合わせただけの「エコ教条的」なドキュメンタリーが増えていて、それも結構観客を動員しているようだったので、真打ちの登場を期待したのだが、それも叶わぬ夢と終わったようだ。
今夜は静かに独りで酒でも呑みながら「WATARIDORI」のDVDでも見てフテ寝でもするとしよう。