発表以来、ネットの一部で話題の文具メーカー「キングジム」の「ポメラ」を発売日に購入。というかたまたまYahooショッピングの某店で個数限定で格安で売られていたので、ネーミングのこっ恥ずかしさにもかかわらず、思わずその場で購入手続きをしてしまったのだった。価格と性能を考えればやはりこれは販売価格で2万円を切って欲しいと思う。ちなみにメーカー公式サイトはこちら → キングジム「ポメラ」公式サイト。
本体サイズは電子辞書と同じぐらいで、普段はキーボードは折りたたまれている。「飛び出す絵本」のごとくキーボードを半分にして折りたたんでいるギミックには感心するし、意外に剛性もあるので簡単に壊れることは無さそうだが、それでも急いで開いたときにヒンジの部分でひねって壊すことは十分にありえそうなので、気をつけるにこしたことは無さそうだ。
起動も素早く、公称値通りほぼ2秒で編集画面が開く。これも通常のパソコンではあり得ないことだ。ただ、表面につやがあるので、液晶の角度によっては入力している自分の不細工な顔が写り込むときがあるのが激しく不快。
キーボードの個々はおしなべて縦方向に狭く、タイピング中にときおり爪が引っかかることがあるので、入力中は指が垂直に当たるように気をつけながら入力する必要がある。ただ、キー個々の横幅は十分な幅があり、たとえばDELLの某ネットPCみたいに、キーが全て縦に細長くて指先が横のキーに当たってしまうようなことはないため、全体としてはスムーズに入力できる。
配列そのものは律儀なほどにPCのキー配列に準拠しているので、購入してすぐ入力が出来てしまう。なんとNum Lockまで付いているので切り替えてテンキー入力も出来てしまうのだが、特にCSVファイル編集機能のようなものが実装されているわけでもないので、あまり使うことは無さそうな気もする。
困ることは文字入力の際によく使うBackSpaceキーが数字キーと同様に小さくなってしまっているので、編集がやりにくいことと、そしてなんと言っても「Caps LockのキーとCTRLのキーの入れ替え」ができないこと。これが一番困る。今使っているPCにはユーティリティを突っ込んでキー配列を変更しているのだが、やはりカット&ペーストの時には面食らってしまう。もっともポメラでの作業は文字入力だけにして、込み入った編集作業はPC上で続行というスタイルで使う分には、あまり気にならなさそうな気もする。
それと液晶に関してもうひとつ困るのがバックライトがないこと。発表以来ネットで公開されている商品写真には、さもバックライトがついているかのような明るい画面がはめ込み画像として使われているが、実際にはバックライトは存在せず、暗いところでは目を凝らして画面に見入らないといけない。これではたとえば夜中にベッドから起き出してすぐにメモを取るようなときでも、なんらかの電気はつけないといけないので大変だ。場合によっては口に小さなLEDライトでもくわえて文字入力しなければいけないような状況もあるかもしれない。そんな状況があるのかどうかよく知らないのだが(笑)。
もっともバックライトをつけると電池の持ちが格段に悪くなるので、痛し痒しといったところか。そのおかげで単4電池2本で20時間駆動などという、通常のノートパソコンなどではどう転んでもあり得ない長時間動作を実現しているのだから難しいところである。
液晶そのものの品質は、ちょっと最近の電子ペーパーを連想させるきれいな表示(褒め過ぎかな?)でわりと見やすいので、長時間文字を入力するのに不便はない。ただできればコントラストの調節機能ぐらいは欲しかった。個人的には現状のコントラストには満足しているが、光の加減によっては文字が見えにくい場合もあるだろう。携帯することが前提のマシンには欲しかった機能だ。
これ以上は、欲を言うなら明朝体も欲しいとか、縦書きも出来たらいいとかそういう部分もあることにはあるのだが、それでも相当のことは出来てしまうことに軽い驚きがある。実際、個人的にはPCでは秀丸エディタ使いなのだから、大差はないという言い方も出来るのだが。
パソコンとの連携は、microSDカードとUSB接続だけ。Bluetooth(←つくづく変な名前だ)や無線LANなどでの共有はない。パソコンならそれで問題はないし、携帯でも今のところは裏技を使えば携帯で見ることが出来るようにはなっているらしい。問題は愛用のiPhone 3Gで、どこかサードパーティーがiPhone 3G用のカードリーダーでも発売してくれないかと思うのだが。
もっともiPhone自体がコピー&ペーストに対応していないと、ファイルを移動できてもそこから先の編集で困りそうな感じだが。(どうも今年末に予定されているiPhoneのアップデートでは、絵文字に対応してもクリップボードの機能には対応しないらしい。いくらなんでも順番が逆だろうと思うのだが)
しかし上記の細々とした難点を差し置いても、苦味走ったシングルタスクマシンの没入感と不思議な解放感は、どこか昔の単機能ワープロを連想させて懐かしい感触もある。世間は猫も杓子もマルチタスク&GUIの大合唱ならぬ「大輪唱」で、本当のユーザビリティの追求を置き去りにしてきているような気がかねてからしているのだが、こうした必要のない機能を思い切って捨ててしまうというアプローチがもっとあってもいいように思うし、実際こうして目の当たりにしてみると、意外に使えるという感触に驚きを感じる。排熱ファンが轟音をたてるハイビジョンディスプレイ搭載の高性能マシンだらけの世界は、それはそれで不毛なものではないだろうか。業界の再考を期待したいところである。